院長挨拶
ご挨拶
この病院の建つ上野(あがの)という場所は、上は福智山麓(ふくちさんろく)、下は彦山川(ひこさんがわ)に挟まれた丘陵に広がる静かでのどかな農村地帯であります。
“上野”という漢字は“うえの”ではなく“あがの”と読みますので、“あがのびょういん”と覚えて下さい。福智山の周辺には陶器で有名な上野焼(あがのやき)の窯が点在しています。病院周辺は山林の緑に囲まれており、四季の移り変わりの風景を眼にしながら、のんびりと落ち着いた療養、養生ができる治療環境にあります。
ここは心の病(やまい)の病院ですので、自然に合わせた時間の流れは実にゆっくりとしたものです。治療には多少世間離れしたリラックスできる空間も必要になります。
普通、病気といえば、どこか体が壊れた状態を想像しますが、目に見えない心もまたひび割れ、骨折し、壊れる事があるのだという事も知っておいて欲しいのです。脳がハードウェアなら心はソフトウェアみたいな感じでしょうか。どちらが壊れても病気が発生します。結果として起きた病気に対して種々の病名がつけられるだけの話しです。バラバラに散乱した心の破片を一つずつ丁寧に拾い集めて縫い合わせて行く患者様との共同作業が長い時間のかかる回復への道です。医療スタッフはそのお手伝いをするだけです。
治療は全くの偶然の出会いに過ぎず、治療が終われば見知らぬ他人です。いつまでも、患者様と呼ばれたくないでしょうから。また、お互いに知りえた事も守秘義務で守られます。公私を区別する治療的距離感とはそうしたものです。
以上のような病院ですので、よかったらいつでも御来院下さい。
長井啓介(ながい けいすけ)
上野病院院長